あなたと日常の喧騒から逃げ出した。
どこまでも続く自然に感動して
少し涙が零れそうになった。
車を運転するあなたの横で
2人が大好きなサザンの曲を聴きながら
少し肌寒い夏の終わりの風が
2人の髪を優しく撫でた
テレビもない 夜になれば街灯もない
ラジオを聴きながら過ごす
木の家のいい香りに包まれながら
オレンジの電気が笑顔を包む。
入口からすぐ傍に置かれた
白いソファーがとても素敵で
子供のようにはしゃぐ私
危ないから辞めなさいと
優しく笑うあなた
夜 外に出る
夏の終わり 肌寒い風が吹く
七輪でサンマやキノコを焼いて食べる
全てが初めての経験
空腹を満たし部屋に入ると
白いソファーにあなたが座り
私を笑顔で手招きする
妙にドキドキして恥ずかしくて
俯いてしまう私
オレンジ色の電気が
顔が紅く染まるのを
少しだけ隠してくれる
いっその事
心まで隠してくれたらいいのに
「おいで」
大好きなあなたの声が
私の耳を撫でて心に響く
そっちに行きたいの
でも いけないの
「来なさい?」
言葉が変わる
彼の声色も変わる
私はもう逆らえない
心の鎖を優しく強引に引かれ
あなたの元へと足が進む
「このソファーいいでしょ
ちゃんとお仕置きが出来るね」
その言葉に顔がさらに紅く染まる
もうオレンジの電飾は隠してくれない
あなたに抱き着くように座ると
そのまま身体を倒され
視界が反転する
「ほらちゃんと手を降ろしなさい」
あなたに咎められ
ソファーから床に手を降ろす
一気に顔が熱くなる
頭が逆さまになったのと
子供みたいにそうされるのが
とてもとても恥ずかしくて
あなたが全て分かっているように
会うまでの悪さを咎めなかった
あなたの前であなたと居る時の
私の行いについて叱った
山奥の木の家で
現実からかけ離れている場所で
急に現実に戻される
いつものように
それほど痛くない平手が
何度も何度も降りてくる
この時間が大好き
だけど この時間が大嫌い
全然痛くなんてないのに
心が締め付けられる
「ごめんなさい…」
平手が止まる
ほんのり熱を帯びているそこに
手を置いたままあなたは言う
「頑張るのはとても殊勝だけれど
頑張るのと無理をするのは違う
そんな事をされて俺が喜ぶような男だと
間違っても思って欲しくはないね」
さっきより痛い平手が一度だけ
お尻の真ん中を捉えた
思わず声があがる私に
また手を置いてあなたは言う
「あんなハシタナイ事を俺の知らぬ間に
どこで覚えてきたんだろうね?
それとも誰かに教えられたのかな」
さっきより痛い平手が一度だけ
また お尻の真ん中を捉えた
そして あなたはまた手を置く
誰かに教わった
そんな事ないって声に出したいのに
声にならなくて首を横に精一杯振る
「嫌だと言ってもダメだよ?
お仕置きだからね、分かってるだろう」
その言葉に涙が零れる
はやく抱きしめて欲しいのに
はやくキスして欲しいのに
「ほら、言いなさい どこで覚えた」
あなたを悦ばせたくて
あまり興味がない動画を見て
勉強して覚えたなんて言いたくない
「言えないんだな?」
あなたの手がポンポンとお尻を撫でる
言えないんじゃないの
言いたくないの 恥ずかしいから
「じゃあ終わらないな」
何度もそこから降ろされる平手
振動で涙が床に落ちる
いつもと違う事は
木の床が涙を吸い込んでゆく事だけ
「やだ・・・も・・っ・やだ」
上手く声にならない
あなたの手は止まらない
「動画で・・・覚えたの…
あなたに悦んで欲しくて・・・・」
一度言葉が口をついて出ると
たどたどしく最後まで全てを伝える
「俺の知らない所で俺の知らない奴に
あれを教えられたのかと思うと
めちゃくちゃにして泣かせたいと思った
いいか?俺はエロい事がしたいんじゃない
それを間違えるな
ただ魅夜子の気持ちは嬉しかった」
真剣なあなたの声が
枯れてしまうんじゃないかと思うくらい
私の涙を誘った
ねぇ
私はあなたの事を満たせてますか?
いつも いつも 不安なのです。
あなたが優しくキスをして
いつも以上に優しく抱いてくれた
「あまり言う事を聞かないでいると
いつか本当にお仕置きするぞ
手を縛って嫌だと泣いても赦さない
それが嫌ならいい子でいなさい」
抱いてくれるあなたは優しいのに
あなたの口から出る言葉に
ぞくっと身体が応える
「怖くなったか?それとも期待したか?」
意地悪く笑うあなたに
口をキスで塞がれて
答えは言えないままになる
怖いのも 期待するのも
どちらも私だから仕方ない
ただひとつ
そこにあなたさえ居てくれたら
答えはどちらだっていいの
ねぇ
愛してるよ。